「保険のルールで、ホームページに施設基準を載せないといけないらしい——うちのサイト、何もしていないけれど大丈夫だろうか」
「厚生局に届出はしたはずだが、サイトに何をどう書けばいいのか、誰も教えてくれない」
実は、施設基準などの「書面掲示事項」のウェブサイト掲載は、経過措置がすでに終わった現在進行形の義務です。
2025年6月から完全義務化されており、ホームページを持っている保険医療機関は、載せていない状態がそのまま指導の対象になり得ます。
結論を先に言えば、やることはシンプルです。
自院の届出一覧を確認し、「当院の施設基準について」という専用ページを1枚作って、院内掲示と同じ内容を載せる——これで基本の対応は完了します。
この記事では、掲載義務の全体像(いつから・誰が対象か)、歯科医院が載せるべき項目のチェックリスト、2026年度改定での変更点、そして専用ページの具体的な作り方までを、表で整理して解説します。
読み終わるころには、自院サイトの「やることリスト」がそのまま作れるようになります。
ホームページ制作の全体像(費用・会社の選び方・載せる中身)は、以下の完全ガイドで解説しています。
結論——ホームページがある歯科医院は、施設基準などの掲載が「義務」です

まず、何がいつ変わったのかを整理します。
この義務は、2024年度の診療報酬改定で「保険医療機関及び保険医療担当規則(療担規則)」などが改正されたことに始まります。
従来、施設基準や加算に関する事項は「院内の見やすい場所に掲示」すれば足りました。
改正により、これらの書面掲示事項を原則としてウェブサイトにも掲載することが求められるようになりました。
| 時期 | 何があったか | 医院への影響 |
|---|---|---|
| 2024年6月 | 療担規則等の改正が施行。書面掲示事項のウェブサイト掲載が原則義務化 | 経過措置期間のため、まだ猶予あり |
| 2025年6月 | 経過措置(2025年5月31日まで)が終了 | 完全義務化。未掲載はこの時点から義務違反の状態 |
| 2026年6月 | 2026年度(令和8年度)診療報酬改定が施行 | ウェブサイト掲載を求める項目が拡充。掲載内容の見直しが必要 |
ポイントは、これが「推奨」ではなく保険診療のルール上の義務だということです。
医療広告ガイドラインのような広告規制とは別枠で、保険医療機関としての約束事に組み込まれています。
そして2026年8月現在、完全義務化からすでに1年以上が経過しています。
「知らなかった」がそのまま個別指導での指摘事項になり得る段階に入っている、というのが現在地です。
対象になる医院・ならない医院——「自ら管理するホームページ」の線引き

次に、「うちは対象なのか」をはっきりさせましょう。
判断の軸は、自ら管理するホームページを持っているかどうかです。
| 医院の状況 | 掲載義務 | 補足 |
|---|---|---|
| 自院のホームページがある | 対象(掲載が必要) | 制作会社に運用を委託していても、医院のサイトである以上「自ら管理する」に該当すると考えるのが安全 |
| ホームページを持っていない | 対象外(院内掲示のみでよい) | 掲載義務のためだけにホームページを新設する必要はない、とされている |
| ポータルサイト(予約サイト等)の医院ページのみ | ケースによる | 医院側で内容を管理・編集できるページかどうかが目安。判断に迷う場合は管轄の厚生局に確認を |
注意したいのは、1行目の「委託していても対象」です。
「サイトの更新は制作会社に任せているから、うちは管理していない」という理屈は通らないと考えてください。
一方で、ホームページを持たない医院に新設義務まではありません。
ただし、集患の観点ではホームページがないこと自体が大きな機会損失なので、これを機に開設を検討する価値は十分あります。
歯科医院が掲載すべき項目——自院の届出に沿ったチェックリスト

ここが本題です。
「何を載せるか」は、大きくどの医院にも共通する事項と、自院が届け出た施設基準・加算に応じた事項の2階建てで考えると整理しやすくなります。
| 区分 | 掲載項目の代表例 | 内容のポイント |
|---|---|---|
| 共通(多くの医院が該当) | 保険医療機関である旨 | 「当院は厚生労働大臣の定めるところにより保険医療機関の指定を受けています」等の一文 |
| 共通 | 明細書発行体制等加算 | 明細書を無料発行している体制の説明 |
| 共通 | 一般名処方加算 | 後発医薬品のある医薬品について一般名処方を行う場合がある旨 |
| 共通 | 医療情報の取得・活用体制(医療DX関連) | オンライン資格確認などの体制に関する掲示。医療DX推進体制整備加算も、掲載が求められる加算の一例 |
| 共通 | 保険外負担(自費診療)の費用 | 自費メニューの料金、文書料などの実費。「〜円から」ではなく患者が総額を判断できる書き方に |
| 歯科固有 | 初診料の注1に係る施設基準(歯初診) | 院内感染防止対策の体制。歯科ではほぼ全医院が関係する基本の届出 |
| 歯科固有 | 歯科外来診療医療安全対策加算 | 医療安全の体制(緊急時対応・連携保険医療機関など) |
| 歯科固有 | 口腔管理体制強化加算(口管強) | 継続的な口腔管理の体制。届出済みの医院は算定の説明とあわせて掲載 |
| 歯科固有 | CAD/CAM冠・CAD/CAMインレー | 白い被せ物が保険でできる体制の説明。患者メリットが伝わりやすい項目 |
| 歯科固有 | 在宅療養支援歯科診療所(歯援診)・訪問診療関連の加算 | 訪問診療を行う医院は連携体制の説明を |
| 歯科固有 | 電子的歯科診療情報連携体制整備加算など2026年度改定の新設・見直し項目 | 2026年6月以降に追加された項目。自院の届出状況に応じて追記が必要 |
この表は代表例です。
実際に掲載すべき項目は自院が厚生局に届け出た内容で決まるため、届出受理通知(控え)の一覧と突き合わせるのが正確です。
網羅的な項目一覧は、全国保険医団体連合会が公開している「院内掲示事項及びウェブサイトへの掲載事項一覧(2026年6月以降)」が実務上の決定版です。
制度の原文は厚生労働省の診療報酬改定ページで確認できます。
2026年度改定で何が変わったか——「体制の掲示」から「実績・状況の公表」へ

2026年6月に施行された令和8年度診療報酬改定では、この流れがさらに一歩進みました。
ウェブサイトへの掲載を要件に含む項目が増え、掲載する中身も「こういう体制があります」だけでなく、実施状況や実績に踏み込んだ公表を求める方向が強まっています。
歯科でいえば、電子的な診療情報連携に関する加算のように、2026年度改定で新設・再編された項目が掲載一覧に加わっています。
2025年6月の完全義務化に対応済みの医院でも、2026年6月以降の内容にアップデートされているかという2度目のチェックポイントが生まれた、ということです。
なお、オンライン資格確認・電子処方箋といった医療DX関連の体制も、ウェブサイト掲載が求められる項目群の一例です。
ただし、これらの加算の算定要件そのものは改定のたびに細かく見直されるため、現時点の正確な要件は厚生局・歯科医師会・レセコンベンダーなどの一次情報で確認してください。
本記事はあくまで「サイトに何を載せるか」の観点から整理しています。
ここまで読んで、「うちのサイト、たぶん対応できていない」と感じた先生もいるはずです。
次のセクションで、具体的な作り方を手順にします。
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どこにどう載せるか——「当院の施設基準について」ページの作り方

実務は、次の5ステップで進めます。
制作会社に依頼する場合も、この手順のまま指示書として使えます。
- ①届出一覧を確認する——厚生局からの届出受理通知(控え)を集め、自院が届け出ている施設基準・加算を一覧にする
- ②専用ページを1枚作る——「当院の施設基準について」「保険診療に関する掲示事項」といったタイトルの固定ページを作成する
- ③院内掲示と内容をそろえる——待合室に掲示している内容とウェブサイトの記載を一致させる(片方だけ更新される事故が最多)
- ④全ページから辿れる場所にリンクを置く——フッターに「施設基準について」のリンクを追加するのが定番
- ⑤更新日を明記し、改定・届出変更のたびに見直す——「2026年6月改定対応・最終更新日」を書いておくと、患者にも指導時にも誠実さが伝わる
掲載形式は、通常のウェブページ(HTML)をおすすめします。
形式ごとの向き不向きは次のとおりです。
| 掲載形式 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| 専用ページ(HTML)——推奨 | スマホで読みやすい。更新が簡単。検索にも載る | とくになし。迷ったらこれ |
| 院内掲示物のPDFをそのまま掲載 | 作るのが最速。院内掲示との一致が保証される | スマホでは拡大しないと読めない。患者への分かりやすさという趣旨からは次善策 |
| トップページに直接列挙 | ページを増やさなくてよい | トップが事務的な文章で埋まり、集患導線を圧迫する。専用ページ分離が無難 |
書きぶりは、届出名の羅列で終わらせず、患者に向けた一言を添えるのがコツです。
たとえばCAD/CAM冠なら「条件により、白い被せ物を保険診療で提供できる体制を整えています」のように書くと、義務対応のページがそのまま医院の強みの説明になります。
WordPressで固定ページを追加する基本操作や、サイト全体の見直しとあわせて対応したい場合は、以下も参考にしてください。
やりがちなNGと、医療広告ガイドラインとの関係

最後に、対応したつもりで落とし穴にはまるパターンを押さえておきます。
| やりがちなNG | 何が問題か | 正しい対応 |
|---|---|---|
| 院内掲示だけでサイトに載せていない | 2025年6月以降は義務違反の状態。個別指導での指摘対象になり得る | 専用ページを作って掲載する(本記事の5ステップ) |
| 2024年時点の内容のまま放置 | 2026年度改定で項目・名称が変わっている。古い加算名の掲載は「更新されていないサイト」の印象も与える | 改定のたびに届出一覧と突き合わせて更新する |
| 自費の料金が「〜円から」だけ | 保険外負担の掲示は患者が費用を判断できることが趣旨。総額が分からない表記は趣旨を満たさない | 代表的なケースの総額・内訳まで書く |
| 施設基準ページで「最高水準の滅菌体制」等と書く | 事実の掲載を超えた優良誤認の表現は、医療広告ガイドライン上の問題になり得る | 体制の事実を淡々と書き、形容詞は足さない |
4行目が示すとおり、ウェブサイトの記載は医療広告ガイドラインの規制対象でもあります。
施設基準の事実を掲載すること自体はまったく問題ありませんが、そこに「地域最高」「完全無痛」のような表現を足した瞬間、別のルール違反が生まれます。
広告表現の線引きは、以下の記事で全体像を整理しています。
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歯科医院のホームページに載せるべき内容とは?|必須ページ10と掲載項目チェックリスト【抜けやすい5つの落とし穴】
必須ページ10の一覧表・各ページの掲載項目・書いたつもりで抜けやすい5つの落とし穴を、原稿づくりのチェックリストとしてまとめています。
今日からできる一歩
今日の一歩は、自院サイトに「施設基準」のページがあるかを確認することです。
やり方は簡単で、Googleで「自院名 施設基準」と検索するか、自院サイトのフッターを見るだけです。
- ページがない——届出受理通知の控えを集めて一覧化するところから始める(本記事の5ステップの①)
- ページはあるが2024〜2025年の内容——2026年6月改定対応の更新を制作会社に依頼する
- ページがあり2026年対応済み——院内掲示との一致と、自費料金の総額表記だけ再点検する
確認は5分で終わります。
そしてこの5分が、次の個別指導への備えと、患者への誠実さの証明を同時に進めてくれます。
よくある質問(FAQ)
Q1. ホームページがない医院も、このために作る必要がありますか?
掲載義務のためだけに新設する必要はない、とされています。
ホームページがない場合は、従来どおり院内掲示で足ります。
ただし集患の観点では、ホームページがないこと自体が新患の取りこぼしにつながるため、開設自体は前向きに検討する価値があります。
費用感は制作費用の相場記事で解説しています。
Q2. 院内掲示のPDFをそのままアップロードするのでもいいですか?
PDF掲載でも「掲載していない」よりは大きく前進します。
ただ、スマホで読みにくいため、患者にとっての分かりやすさという制度の趣旨からはHTMLの専用ページが望ましい形です。
まずPDFで早く掲載し、次の更新でページ化する二段構えも現実的です。
Q3. サイトのどこに載せればいいですか?
決まった場所の指定はありませんが、実務の定番は「専用ページ+フッターからのリンク」です。
患者や審査側が探して見つけられる状態にしておくことが大切で、どのページからも辿れないような置き方は避けてください。
Q4. 掲載しないと、罰則はあるのですか?
即座に罰金のような罰則が科される仕組みではありません。
ただし療担規則上の義務であるため、個別指導での指摘・改善指導の対象になり得ます。
施設基準の掲示要件を満たしていない状態が続くことは、算定の適正性を問われるリスクにもつながるため、「見つかるまで放置」は割に合いません。
Q5. 内容は毎年変わるのですか?更新のタイミングが分かりません。
大きな見直しは、診療報酬改定のある偶数年(2026年・2028年…)の6月です。
それ以外でも、自院が新しい施設基準を届け出たとき・届出を取り下げたときには、その都度サイトの記載も更新が必要です。
「改定の6月」と「届出を変えたとき」の2つをトリガーにしておけば、更新漏れはほぼ防げます。
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この記事の監修:現役歯科医師(Dentique Atelier代表)
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