「新患は毎月来ているのに、気づけば予約表の空きが増えている——」
「検診のご案内は出しているつもりなのに、戻ってくる患者さんはいつも同じ顔ぶれ——」
その悩みの正体は、多くの場合「リコール率」という一つの数字に表れています。
リコール率とは、治療を終えた患者さんが定期検診・メンテナンスに戻ってきてくれる割合のことです。
結論を先に言えば、リコール率は院長の人柄や治療の腕ではなく、「仕組み」で決まります。
この記事では、リコール率の計算式と正しい測り方、平均の目安、そして今日から着手できる仕組み化の5ステップまでを、順番に解説します。
新患集めも含めた集客全体の設計図は、親記事の完全ガイドとあわせてお読みください。
結論:リコール率は「人柄」ではなく「仕組み」で決まる
リコール率の高い医院を見ると、「先生の人柄が良いから」「スタッフの感じが良いから」と思いがちです。
もちろん人柄は大切ですが、私たちが歯科医院のWebマーケティングを支援してきた実感では、それは主因ではありません。
リコール率の高い医院に共通しているのは、「測る→価値を伝える→次回予約を取る→思い出してもらう→数字を見直す」という一連の流れが、特定の誰かの頑張りではなく医院の仕組みとして回っていることです。
逆に言えば、リコール率が低いのは、院長やスタッフの努力不足ではありません。
この流れのどこかが仕組みとして欠けているだけです。
仕組みの欠けは、根性では埋まりません。
ですが、欠けている場所さえ分かれば、埋める作業自体は難しくないのです。
まずは自院の現在地を数字で知るところから始めましょう。
リコール率とは?計算式と正しい測り方

リコール率の基本の計算式は、とてもシンプルです。
リコール率(%) = 期間内に再来院した患者数 ÷ リコール対象の患者数 × 100
ただし、実務ではこの「分母(リコール対象)」の取り方で数字が大きく変わります。
よく使われる測り方は、次の3つです。
| 測り方 | 計算のしかた | 向いている場面 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| ①案内ベース | リコール案内を送った人のうち、来院した人の割合 | ハガキ・LINEなど案内施策の効果測定 | 案内を送っていない患者さんが分母から抜け、実態より高く出やすい |
| ②期間ベース | ある月の来院患者のうち、6ヶ月以内に再来院した人の割合 | 医院全体の定着力の把握 | レセコンの集計機能や台帳が必要。まずはここがおすすめ |
| ③治療完了ベース | 治療を終えた患者さんのうち、初回検診に移行した人の割合 | チェアサイドの声かけ・次回予約の効果測定 | 「治療完了」の定義を院内でそろえる必要がある |
どれが正解ということではなく、大切なのは「同じ測り方で毎月続けること」です。
測り方が毎回変わると、改善したのか悪化したのかが分からなくなります。
まだ一度も測ったことがなければ、②の期間ベースから始めてみてください。
「半年前のある月に来院した患者さんのリスト」をレセコンから出し、その後6ヶ月以内に再来院があるかを数えるだけです。
所要は30分ほどで、自院の定着力が1つの数字になります。
歯科医院のリコール率の平均・目安はどのくらい?

「うちの数字は、良いのか悪いのか」——測ったら次に気になるのが相場です。
国の統計では、過去1年間に歯科健診を受けた人の割合は58.0%です(厚生労働省「令和4年歯科疾患実態調査」)。
ただしこれは国民全体の話で、医院単位のリコール率とは別物です。
医院単位のリコール率は、歯科医院経営の現場では「30〜40%台にとどまる医院が多い」と言われることが一般的です。
一方で、予防歯科に力を入れている医院では70〜80%台を維持している例もあり、医院間の差がとても大きい数字でもあります。
自院の立ち位置をつかむ目安として、次の表を使ってください。
| リコール率 | 状態の目安 | まずやること |
|---|---|---|
| 〜30% | 仕組みがほぼ未整備。「痛くなったら来る場所」になっている | 次回予約の徹底とリマインドの導入(ステップ2〜4) |
| 30〜50% | 平均圏。案内はしているが、単発・属人的になりがち | 測り方を固定し、弱い工程を特定する |
| 50〜70% | 仕組みが回り始めている。伸びしろは「取りこぼしの回収」 | リマインドの多重化と中断患者の掘り起こし |
| 70%〜 | 優良圏。予防型の経営が成立している | 数字の維持と、スタッフが変わっても回る体制づくり |
ここで強調したいのは、リコール率の数%の差が、経営に大きく効くことです。
たとえば月の来院患者が300人の医院でリコール率が10ポイント上がると、単純計算で毎月30人の再来院が増えます。
新患を毎月30人増やすことの大変さを思えば、リコール率の改善は「もっとも確実で、もっとも費用のかからない集客」と言えます。
リコール率が上がらない4つの原因

リコール率が伸びない医院には、共通する詰まりどころがあります。
代表的なのは次の4つです。
原因① 定期検診の「価値」が伝わっていない。
患者さんにとって歯科医院が「痛くなったら行く場所」のままだと、治療が終わった時点で通う理由が消えます。
「なぜ3ヶ月後に来ると良いのか」を、その患者さん自身の口の状態に紐づけて伝えられているかが分かれ目です。
原因② 次回予約を取らずに帰している。
「また時期が来たらご連絡しますね」で会計を終えると、再来院のハードルは一気に上がります。
連絡を受けてから予約する手間は、患者さんにとって想像以上に重いのです。
原因③ リマインドが単発・一方通行になっている。
ハガキを1回送って終わり、という医院は少なくありません。
案内が1回・1手段だけだと、見落とされた時点で終わってしまいます。
原因④ そもそも数字を測っていない。
リコール率を誰も知らない医院では、改善の打ち手も、打ち手の効果も、すべて感覚頼みになります。
測っていないものは、良くしようがありません。
思い当たる項目はあったでしょうか。
4つのうちどれか1つでも当てはまれば、そこが伸びしろです。
次の章で、この4つを順番に埋めていく5ステップを紹介します。
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リコール率を上げる仕組み化5ステップ

ここからは、リコール率を仕組みで上げる手順です。
順番が大切なので、ステップ1から進めてください。
ステップ1 現状を測る(今週やること)。
前章までの方法で、まず現在のリコール率を1つ出します。
正確さより「同じ測り方を続けられること」を優先してください。
ステップ2 チェアサイドで「次に来る理由」を伝える。
再来院するかどうかは、治療が終わる瞬間にほぼ決まります。
「◯◯さんは歯ぐきの境目に汚れがつきやすいので、3ヶ月後に一度チェックさせてください」のように、その人固有の理由とセットで次回を提案します。
担当衛生士を決めて「次も同じ担当がお迎えする」と伝えられると、さらに効果的です。
ステップ3 会計時に次回予約まで取る。
チェアサイドで価値が伝わっていれば、受付での「では3ヶ月後のご予約をお取りしますね」が自然につながります。
その場で決めきれない患者さんには、無理に取らず「ご案内リスト」に登録し、時期が来たら連絡する運用に切り替えます。
ステップ4 リマインドを多重化する。
次回予約を取った人にも、取らなかった人にも、時期が来たら思い出してもらう連絡を重ねます。
手段ごとの特徴は次章で比較しますが、要点は「1回で届かせようとしない」ことです。
ステップ5 月1回、数字をチームで見る。
月初の朝礼5分で「先月のリコール率」を共有するだけで構いません。
数字が毎月見えるようになると、スタッフの声かけは自然に変わります。
担当ごとの成功例を共有できれば、仕組みは勝手に育ち始めます。
5つすべてを一度にやる必要はありません。
ステップ1と2だけでも、多くの医院で数字は動き始めます。
リマインド手段の比較——ハガキ・電話・メール・LINE

リコール案内の手段は、それぞれ得意・不得意がはっきりしています。
主な4手段を比べてみましょう。
| 手段 | 届きやすさ | 手間・コスト | 向いている使い方 |
|---|---|---|---|
| ハガキ | △ 開封前に処分されることも。高齢の患者さんには有効 | 印刷・郵送コストと宛名作業が毎回かかる | デジタルが届かない層への補完 |
| 電話 | ○ 会話できれば確実。ただし出てもらえない時間帯が多い | スタッフの時間を大きく使う | 中断患者の掘り起こしなど「ここぞ」の場面 |
| メール | △ 迷惑メールに埋もれやすく、開封率が低い | ほぼ無料・一斉送信できる | 補助的な案内 |
| LINE公式アカウント | ◎ 日常的に開くアプリに届き、開封率が高い | 低コストで自動化・一斉配信ができる | リコール案内の主軸。予約リンクへ直接誘導できる |
現在の主流は、LINEを主軸に、届かない層をハガキや電話で補完する組み合わせです。
LINEは案内から予約までを1つの画面で完結でき、「思い出したのに予約が面倒で流れる」という最大の離脱を塞げます。
LINE公式アカウントの導入手順や活用法は、以下のページでくわしく解説しています。
ケース別——自院に近いのはどれ?

最後に、よくある4つのケース別に、着手する順番を整理します。
ケース1:新患は多いのに、定着しない
駅前・都市部の医院に多いパターンです。
入口(新患)は機能しているので、優先すべきはステップ2〜3です。
チェアサイドの価値づけと次回予約の徹底だけで、数字が大きく動く余地があります。
ケース2:昔からの患者さんは来るが、新しい患者さんが続かない
長く通う常連さんで回っている医院です。
新しい患者さんに「この医院に定期的に通う理由」がまだできていないので、初診〜治療完了までの体験と説明を見直します。
初診時の資料や説明の型を1つ作るだけでも、印象は変わります。
ケース3:ハガキを送っているのに、反応が薄い
案内の手段と回数がボトルネックのパターンです。
リマインドの多重化、特にLINEの導入を優先してください。
ハガキをやめる必要はなく、「LINE+ハガキ」の二段構えにするだけで届き方が変わります。
ケース4:スタッフに任せたいが、何をどう頼めばいいか分からない
院長が一人で抱えているパターンです。
「測る=受付」「声かけ=担当衛生士」「案内=受付」「月次共有=院長」のように、工程ごとに担当を割り振ってしまいましょう。
数字が毎月共有される場さえ作れば、任せた仕組みは崩れにくくなります。
なお、リコール率の低下は「患者数の減少」として表面化することも多い問題です。
患者数全体の立て直しは、以下のページで解説しています。
まとめ:まず「先月の数字」を1つ出すことから——今日からできる一歩
リコール率は、人柄ではなく仕組みで決まります。
計算式はシンプルで、測り方を固定すれば今日から追える数字です。
30〜40%台にとどまる医院が多いからこそ、仕組みを整えた医院から順に、確実な差がつきます。
今日からできる一歩は、半年前のある月の来院患者リストを出し、6ヶ月以内に再来院した人を数えてみることです。
所要は30分ほどです。
その1つの数字が、明日からの声かけと案内を変える出発点になります。
よくある質問(FAQ)
Q1. リコール率は、どのくらいの期間で改善しますか?
チェアサイドの声かけと次回予約(ステップ2〜3)は、始めたその月から次回予約率に表れます。
リコール率そのものは3〜6ヶ月後の再来院で測る数字なので、効果の確認は半年単位で見てください。
先行指標として「次回予約を取って帰った患者さんの割合」を毎月見るのがおすすめです。
Q2. 次回予約を勧めると、押し売りのようにならないか不安です。
「予約を取ること」ではなく「その患者さん固有の理由」を先に伝えるのがコツです。
ご自身の口の状態に紐づいた提案は、押し売りではなく専門家のアドバイスとして受け取られます。
その場で決めない選択肢(ご案内リスト)を残しておけば、強引さはさらに薄まります。
Q3. ハガキとLINE、どちらを優先すべきですか?
これから整えるならLINEを主軸にするのがおすすめです。
開封率が高く、案内から予約までを1画面で完結でき、一度作れば自動で回せるためです。
ただし高齢の患者さんが多い医院では、ハガキ・電話の併用が引き続き有効です。
Q4. スタッフが少ない小規模医院でも、仕組み化できますか?
できます。
むしろ小規模医院ほど、担当が固定されやすく「同じ人がお迎えする」強みを活かせます。
まずはステップ1(測る)とステップ2(声かけ)だけに絞って始めてください。
この2つはコストがかからず、人数にも依存しません。
Q5. リコール率と「メンテナンス移行率」は違うものですか?
厳密には、治療完了後に初回の定期検診へ進んだ割合を「移行率」、その後も継続して通っている割合を「リコール率(継続率)」と分けて使うことが多いです。
ただ、呼び方より大切なのは、自院の中で定義と測り方を統一することです。
この記事の②期間ベースで測っておけば、両方の傾向をカバーできます。
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この記事の監修:現役歯科医師(Dentique Atelier代表)
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