「訪問診療をはじめたのに、依頼がぜんぜん来ない——」
「チラシもポスティングもやったのに、問い合わせは月に数件——」
訪問歯科の集客は、外来の集客とはまったくの別物です。
外来で効いた「HP・マップ・看板」をそのまま持ち込んでも、残念ながら依頼は増えません。
結論を先に言えば、訪問歯科の依頼を決めるのは、患者さん本人ではなく「家族とケアマネジャー」です。
だから集客の主戦場は、チラシや広告ではなく、決める人へ届ける紹介ルートづくり——つまり営業と連携になります。
この記事では、外来集客との違い、依頼が来る4つのルート、そしてケアマネ・施設との連携を仕組みにする5ステップを、順番に解説します。
集客全体の設計図は、親記事の完全ガイドとあわせてお読みください。
結論:訪問歯科の依頼は「本人」からは来ない——外来集客との違い

まず、前提の整理からです。
訪問歯科の対象は、通院が難しくなった方——在宅で療養する高齢の方や、介護施設で暮らす方が中心です。
ここが集客上の最大のポイントです。
患者さん本人は、検索もしないし、チラシも読まないのです。
「歯が痛い」「入れ歯が合わない」に気づき、歯医者を探し、依頼を決めるのは、そばにいる家族・ケアマネジャー・施設の職員さんです。
外来集客と条件がどう違うか、表で整理します。
| 項目 | 外来の集客 | 訪問歯科の集客 |
|---|---|---|
| きっかけに気づく人 | 患者さん本人 | 家族・ケアマネ・施設職員 |
| 依頼を決める人 | 患者さん本人 | 家族とケアマネが中心(本人は選べないことが多い) |
| 探し方 | 検索・マップ・口コミ | ケアマネへの相談・施設の提携先・知っている医院への電話 |
| 商圏 | 半径1〜2km前後 | 保険のルール上、原則として医院から半径16km以内 |
| 効く施策 | SEO・MEO・口コミ・看板 | 紹介ルートづくり(営業・連携)+Webは受け皿 |
| 決め手 | 近さ・評判・通いやすさ | 「すぐ来てくれるか」「対応範囲」「連携のしやすさ」 |
なお商圏の欄にあるとおり、保険診療の歯科訪問診療は、原則として医院から半径16km以内という距離のルールがあります。
「どこまで行けるか」ではなく「16km圏内のどこに、依頼をくれる人がいるか」を考えるのが、訪問歯科の集客の出発点です。
ステップ①:依頼が来る4つのルートを知る——狙うのは「決める人」がいる場所【比較表】

最初のステップは、依頼の入口を知ることです。
訪問歯科の依頼は、おもに次の4つのルートから来ます。
| ルート | 決める人 | アプローチの方法 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| ①ケアマネジャー(居宅介護支援事業所・地域包括支援センター) | ケアマネと家族 | 情報提供の訪問・資料・勉強会 | 在宅の依頼の中心。1人のケアマネが多くの利用者さんを担当 |
| ②介護施設(特養・老健・グループホームなど) | 施設長・看護職員 | 協力歯科の提案・定期健診と口腔ケア体制の提案 | 1件の連携で継続的な診療につながる |
| ③病院(退院支援・地域連携室) | 連携室の職員・家族 | 連携室への案内・退院時の受け皿の提示 | 退院後の在宅移行のタイミングで依頼が生まれる |
| ④自院の外来患者さんとご家族 | 家族 | 院内掲示・リコール中断者への案内 | 信頼済みなので最も依頼につながりやすい |
共通点は、どのルートにも「決める人」がいることです。
そしてWeb(HP・マップ)は、この4ルートの人たちが医院を調べ直すときの受け皿として効きます。
順番が大事です。
先にルートへ挨拶が届いていて、調べたらHPできちんと確認できる——この並びで、はじめて依頼になります。
ステップ②:ケアマネジャーへの営業——「挨拶回り」より「情報提供」が喜ばれる

在宅の依頼でいちばん重要なのが、ケアマネジャーとの関係づくりです。
ケアマネジャーは利用者さんのケアプランを組む専門職で、「歯や入れ歯で困っている」という相談の多くが、まずこの方たちに集まります。
営業というと身構えますが、やることは売り込みではありません。
ケアマネジャーが仕事で必要とする情報を、先に渡しておく——これだけです。
具体的には、A4で1枚の紹介シートにこの4点をまとめて、医院から16km圏内の居宅介護支援事業所と地域包括支援センターへ届けます。
- 対応できる内容(入れ歯の調整・むし歯治療・口腔ケア・摂食嚥下の相談など)
- 対応エリアと、新規の受け入れ状況
- 依頼から初回訪問までの流れと日数の目安
- 依頼の窓口(電話・FAX・フォーム)と担当者名
ケアマネジャーが知りたいのは、医院の設備自慢ではなく「いま依頼したら、すぐ動いてくれるか」です。
だから空き状況と流れを明記した1枚は、名刺よりずっと強く記憶に残ります。
関係ができてきたら、口腔ケアや誤嚥性肺炎予防をテーマにした小さな勉強会を提案するのも有効です。
「教えてくれる先生」になれれば、指名で依頼が来るようになります。
ステップ③:介護施設・病院との連携——「協力歯科」の枠を取りにいく

次のステップは、施設と病院です。
特別養護老人ホームなどの介護施設は、入居者さんの口腔の健康管理のために、協力歯科医療機関を定めることが求められています。
つまり施設側にも、「連携できる歯科医院を探したい」という事情があるのです。
ここに、定期健診と口腔ケアの体制をセットで提案できると、1件の連携から継続的な診療につながります。
提案のポイントは、施設の職員さんの負担を減らす設計にすることです。
- 訪問の曜日・時間を固定して、施設の生活リズムに合わせる
- 診療後に、入居者さんごとの結果を書面で残す(家族・職員への共有用)
- 急な痛みや入れ歯のトラブルに、臨時対応の窓口を用意する
病院ルートでは、退院支援や地域連携室が窓口になります。
入院中に口腔の問題が見つかり、退院後の受け皿を探している——このタイミングで「在宅で診られる歯科」として知られていれば、依頼は自然に生まれます。
ステップ④:院内とWebの受け皿——外来の「通えなくなった患者さん」を拾う

4つ目のステップは、すでに医院の中にある入口です。
長年通ってくれていた患者さんが、足腰の衰えや介護の始まりをきっかけに、リコールに来なくなる。
この「通えなくなった」が、実は訪問診療のいちばん自然な入口です。
やることはシンプルです。
- 待合室に「通院が難しくなっても、ご自宅で診られます」の掲示を出す
- リコールが途切れた高齢の患者さんへ、訪問診療の案内を一言添える
- ご家族が付き添いで来院したときに、パンフレットを渡せるようにしておく
そしてWebの受け皿です。
「訪問歯科 ◯◯市」と検索するのは本人ではなく、家族とケアマネジャーです。
HPに訪問診療の専用ページを作り、対応エリア・費用の目安(保険適用の説明)・依頼から訪問までの流れを明記してください。
紹介シートを受け取ったケアマネジャーも、依頼の前に必ずHPを見て確認します。
ここが空っぽだと、せっかくの営業が最後の一歩で止まってしまいます。
HPとマップの整え方は、以下のページで詳しく解説しています。
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ステップ⑤:続く仕組みと効果測定——「依頼元の記録」だけで営業が変わる

最後のステップは、単発の依頼を「続く紹介」に変える仕組みです。
核になるのは、たった1つの習慣——依頼が来るたびに、依頼元を記録することです。
新規の依頼を受けたら、「どこから(ケアマネ・施設・病院・院内・Web)」「誰の紹介か」を必ずメモし、月ごとに集計します。
3か月も続ければ、どのルートが機能していて、どこが手薄かが数字で見えてきます。
あわせて、紹介元への報告を仕組みにします。
初回訪問のあとに「診療の結果と今後の予定」を紹介元のケアマネジャーへ一報する——これだけで「あの医院は報告が丁寧」という評判になり、次の紹介につながります。
自院の状況別の優先順位も整理しておきます。
| 医院の状況 | 最優先の一手 | 次の一手 |
|---|---|---|
| これから訪問を始める | 院内の「通えなくなった患者さん」への案内から開始 | 16km圏のケアマネ事業所リストを作り紹介シートを配る |
| 始めたが依頼が少ない | 紹介シートの作り直し(空き状況・流れ・窓口の明記)と再訪問 | HPの訪問診療ページを整備して受け皿を作る |
| 在宅は回るが伸ばしたい | 施設への協力歯科の提案で継続案件を作る | 病院の地域連携室へ案内を広げる |
今日からできる一歩
この記事の内容を全部やろうとすると、手が止まってしまいます。
今日の一歩は、医院から16km圏内の居宅介護支援事業所を3件リストアップすることです。
「◯◯市 居宅介護支援事業所」で検索すれば、市区町村の一覧ページが見つかります。
近い順に3件、名前と住所を控えてください。
それが終わったら、紹介シートに載せる「依頼の窓口(電話かFAX、担当者名)」を院内で決める——ここまでできれば、今日の準備としては十分です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 訪問歯科の集客に、チラシやポスティングは効きますか?
主役にはなりにくいです。
依頼を決める家族やケアマネジャーに、ポスティングはほとんど届きません。
ただし、ケアマネ事業所や施設に「置いてもらう」パンフレットは別物で、こちらは紹介の場面で使われるため効果的です。
紙の施策の使い分けは、以下のページで解説しています。
Q2. ケアマネジャーへの営業は、嫌がられませんか?
売り込みでなければ、歓迎されることが多いです。
ケアマネジャーは「すぐ動いてくれる訪問歯科」の情報を仕事で必要としています。
空き状況・対応範囲・依頼の流れという実務情報を簡潔に届ける形なら、迷惑になるどころか、助かる情報提供になります。
訪問の時間帯だけは、月末月初の書類業務の繁忙期を避けるのが礼儀です。
Q3. 対応エリアはどこまで広げられますか?
保険診療の歯科訪問診療は、原則として医院から半径16km以内に限られます。
ただし実務では、移動時間がそのまま診療できる件数を減らすため、最初は片道20〜30分圏に絞るのがおすすめです。
狭いエリアで訪問日を曜日ごとに固めると、移動のムダが減り、急な依頼にも応えやすくなります。
Q4. 外来が減ってきたので訪問を始めたい。何から手を付けるべきですか?
最初の一手は、院内の患者さんへの案内です。
リコールが途切れた高齢の患者さんとそのご家族は、すでに医院を信頼してくれている、いちばん近い見込み患者さんだからです。
並行して、外来が減った原因の切り分けもおすすめします。
以下のページで、原因を4層に分けて立て直す手順を解説しています。
Q5. HPからの依頼は本当に来るのでしょうか?
「HPだけで」依頼が来ることは多くありませんが、「HPがないと」依頼を取りこぼします。
検索するのは家族とケアマネジャーで、紹介や営業で医院名を知ったあと、依頼の前に必ずHPで確認するからです。
訪問診療ページには、対応エリア・費用の目安・流れ・依頼窓口の4点を明記してください。
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この記事の監修:現役歯科医師(Dentique Atelier代表)
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